アクセシブルブック(Accessible book)とは、聞き慣れない言葉ですが、要するに通常の書籍を読むことに難がある人のための書籍を総称するもので、例えば点字書籍、朗読音源(オーディオブック)、大活字版、電子書籍などがこれに当たります。
こうした書籍については、このブログでもたびたび取り上げてきました。
本書は、様々なアクセシブルブックの紹介・解説から、アクセシブルブックが求められる背景、その普及状況や課題など、多岐にわかる話題をコンパクトにまとめた一冊になっています。
ここでは、これまでこのブログで言及できなかった「DAISY」と「LLブック」について取り上げたいと思います。
DAISYは、Digital Accessible Information SYstemの頭文字をとった略語で、デジタル録音図書の国際標準規格を定める情報システムを指します。この規格に基づいて作られた本を、DAISY図書といい、今日では音声のみならず画像も入った「マルチメディアDAISY」や、テキスト情報だけが入っており、パソコンの読み上げ機能などを使って聴く「テキストDAISY」があります。
LLブックのLLとは、スウェーデン語の「LättLäst」(やさしく読めるという意味)の略で、ディスレクシア(読字障害)の方のために、読みやすい工夫が施された本です。難しい漢字を避けたり、漢字にルビを振ったり、文節ごとに分かち書きされていたりします。このほか、写真やイラストを多用するなど、文字を読むことを苦手とする人に向けた工夫が施されています。
また、このブログでもかつてEPUBという電子書籍の国際規格について取り上げたことがありますが、EPUBの策定にはDAISYコンソーシアム(共同事業体)も深く関わっており、「EPUBにはアクセシビリティの”種”が最初から埋められてい」たというのは、本書で初めて知りました。
電子書籍は読書のアクセシビリティを高める有効な道具であることは明らかですが、本書でも指摘される通り、まだまだ発達段階であり、多くの課題を抱えています。例えば、TTSの読み間違いや、読み上げ時の図表や画像の取り扱いなどが未解決の課題として残っています。こうした課題が解消されることで、健常者を含む、より多くの人にとって、優れた読書体験ができることを期待したいと思います。
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