『小さな出版社のつくり方』を読みました

『小さな出版社のつくり方』

永江朗『小さな出版社のつくり方』(2016、猿江商會)

以前も書きましたが、「ひとり出版社」(少人数出版社含む)は、世の中にたくさんあって、ひとり出版社についての本というのもたくさんあります。本書もそのひとつで、取り上げられるのは、いずれも個性派揃いの11社+1です。(+1というのは、この本自身を出している猿江商會のことです。最後に少し触れられています)

アルテスパブリッシング / 鉄筆 / 羽鳥書店 / 悟空出版 / ブックエンド / 小さい書房 / コルク / シブヤ パブリッシング アンド ブックセラーズ / トランスビュー / ころから / 共和国

まず、興味深かったのは、社名の話。

「鉄筆出版でも鉄筆書房でも鉄筆社でもなく、たんに鉄筆。(中略)最近、角川書店はKADOKAWAになったけれども、あいかわらず書籍の背には角川書店と入っている本が多い。大手・中堅で〈社〉や〈書店〉〈書房〉などがつかないのは、文藝春秋や、ぎょうせい、学研(旧名「学習研究社」)、法研(旧名「保健法規研究会」)ぐらいのものではないか」(p.27)

うちも「八不」。何もつかない単なる「八不」です。しかしあまり深い意味はありません。単にちょうどよいのがなかっただけです。面白いのがこの本に取り上げられている「ころから」の話。

「『ころから』にするか『ころから出版』とか『ころからパブリッシング』にするか。『パブリッシング』なんてつけるのはやめなさいといったのは、アルテスパブリッシングの鈴木茂さんだった。『アルテス』だけでよかったのに、『パブリッシング』をつけたのはよけいだったと後悔しているそうだ」(p.179)

この本でもうひとつ興味深かったのは、取次の話です。この本の裏テーマといってもいいんじゃないかと思います。小さな出版社を見ていくことで、次第に現行の委託配本システムの問題点が浮き彫りになっていく様はスリリングでもありました。

また、ヤスケンこと安原顯氏が始めようとした出版エージェントの話(から始まる日本における出版エージェントの話)なども興味深かったです。

各社様々な事情から事業を立ち上げ、様々な思想や戦略があって、実に楽しい一冊でした。

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