『イギリス哲学者の英語』

秋元実治『イギリス哲学者の英語 通時的研究』(開拓社、2023)

ベーコン、ホッブズ、ロック、ヒューム、ミル、ラッセル――6人のイギリスの哲学者が使う英語、その文法的、文体的特徴を見ることで、英語表現の歴史的変遷を探った研究書です。

飽くまで研究書ですので、一般向けの英語雑学本のようなものではなく、それゆえ、私のような浅学非才には、十全に理解できたとはとても言えません。

それでも、興味深かったところもいくつかあり、そのひとつを挙げるとすれば、かつてknowを否定する際には、do not knowだけでなく、know notという表現もあったというところです。

時代が下るにつれ、do not knowが優勢になるわけですが、先に挙げた6人の哲学者のうち、ラッセルを除く5人の哲学者のテキストにおける頻度割合は次のようになります。

know notdo not know
Bacon30
Hobbes203
Locke292
Hume10
Mill25
秋元実治『イギリス哲学者の英語』p.157より

さすがにミルになると、do not knowの方が倍以上になります。know notが使われたのは19世紀前半までということなので、ラッセルの時代にはもう使われていなかったのでしょう。

余談:ミルの結婚

余談ですが、本書において、ミルの略歴を記した部分で、「1830年、24歳の時、Harriet Taylorと結婚した」(p.9)とあるのですが……。さて、当サイトのJ・S・ミル年表を見てみましょう。

1830年は、ハリエット・テイラーを紹介された年です。テイラー氏の自宅で開かれた晩餐会で、共通の友人であったウィリアム・フォックスが、両者を引き合わせました。

結婚したのは、テイラー氏が亡くなった2年後、1851年4月、ミルが44歳の時です。

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