八不について

事業内容
電子書籍の出版、およびデジタルコンテンツの販売

創業
2022年7月

事業理念
古今東西の知的遺産を継承し、発展せしめることによって
​人々の幸福に寄与する

屋号〈八不はっぷ〉について

『中論』における〈八不〉

八不は、ナーガールジュナ(龍樹)の『中論』(『根本中頌』)に由来します。龍樹は、この書の冒頭において「不生不滅、不常不断、不一不異、不来不去であり、戯論が寂滅して吉祥である縁起を説いた正覚者を、諸々の説法者の中で最も勝れた人として稽首する」という言葉を掲げており(帰敬序 / 帰敬偈)、この「不生不滅、不常不断、不一不異、不来不去」のことを八不といいます。

チャンドラキールティ(月称)は、この八不を正法(正しい真理)とし、縁起の別名であるとしています(『プラサンナパダー』)。

仏教学者の中村元氏は、八不を次のように訳しています。

「〔宇宙においては〕何ものも消滅することなく、何ものもあらたに生ずることなく、何ものも終末あることなく、何ものも常恒であることなく、何ものもそれ自身と同一であることなく、何ものもそれ自身において分かたれた別のものであることなく、何ものも〔われらに向かって〕来ることもなく、〔われらから〕去ることもない」

『龍樹』講談社学術文庫, p.160

また、哲学者の黒崎宏氏は、八不を次のように解読しています。

「『中論』の核心は、<生・滅・常・断・一・異・来・去>を主張する形而上学的(存在論的)議論を根底から否定することにある。それが、『不生・不滅・不常・不断・不一・不異・不来・不去』という『八不』の主張である。したがって、『八不』の主張で言われる<八不の世界>は、存在論のレヴェルで理解されはならない。では、いかなるレヴェルで理解されねばならないのか。それは、存在論のレヴェルを根底から否定する言語ゲームのレベルにおいて、なのである」(強調は原文傍点)

『ウィトゲンシュタインから龍樹へ 私説『中論』』哲学書房, p.19


非常に難解な思想です。しかしながら、いずれにせよ、龍樹にとって、八不こそが、仏教の核心的な教理であったわけです。

英名hapは「僥倖」の意

また、屋号〈八不〉はアルファベット表記をhapとしています。英語のhapには「偶然、たまたま」という意味があり、happeningやhappyと同じく、古ノルド語のhapに由来します。

古ノルド語のhapには「好機、偶然による幸運、僥倖」という意味があり、屋号〈八不〉にはこの意味も込められています。すなわち、正しい真理によって人々にたまさかの幸運をもたらす――これが屋号〈八不〉に込められた思いです。

タイトルとURLをコピーしました