電子書籍
功利主義論
J・S・ミル [著]
奥田伸一 [訳]
BASEでの販売価格:
¥1,000
(税込)
「満たされた豚より……満たされないソクラテスの方がよい」
毀誉褒貶に晒されながらも、未だ難攻不落の倫理学説・功利主義。ベンサムによって創始され、ミルによって発展させられたこの最強の倫理学説の、ミル自身による簡にして要を得た解説書が、この『功利主義論』である。 本書を読めば、質的快楽主義や選好説への道を開いたという有体の解釈にとどまらない大きな示唆を得られるはずである。
本翻訳の特徴
明治時代、西周が『利学』のタイトルでJ・S・ミル『功利主義論』の翻訳書を出版して以降、日本で出版されたすべての翻訳書を参照し、これまでの翻訳書に見られた誤訳や悪訳、不明瞭な訳を改め、最も正確で読みやすい『功利主義論』が完成しました。
- 「訳者覚え書」にて、既訳との具体的な相違点(大きく訳出が異なる部分)を明示しています。
- 「既訳一覧」にて、過去日本で出版された翻訳書全12点を紹介しています。
目次
凡例
第一章 総説
第二章 功利主義とは何か
第三章 功利性原理の究極的な拘束力について
第四章 功利性原理の論証方法について
第五章 正義と功利の関係について
訳註
既訳一覧
訳者覚え書
奥付
ファイル形式:EPUB(リフロー型)
サポートページを作成しました!
『功利主義論』をより深く学びたい読者のための
サポートページを用意しました。是非ともご活用ください。
- 第1弾 J・S・ミル年表
- 第2弾 ミル著作集を読もう
- 第3弾 『功利主義論』に言及された人々
今後も随時更新予定!
J. S. ミル『功利主義論』新訳
奥田伸一訳の
何が新しいのか?
~あなたが奥田訳を選ぶべき理由~
J・S・ミル『功利主義論』の邦訳がすでに数多ある中で、なぜわざわざ奥田伸一訳を選ぶべきなのでしょうか?
既訳の方が立派な研究者によって訳されており、より信用できる内容なのではないでしょうか?
奥田訳を選ぶべき第一の理由は、奥田訳では、過去に翻訳出版された『功利主義論』全12点のすべてを参照し、作成されているという点にあります。
そして「訳者覚え書」にて、奥田訳と異なる訳出を行っている部分を具体的に指摘し、解説しています。
たとえば、『功利主義論』にある、次の文章を見てください。
The social state is at once so natural, so necessary, and so habitual to man, that, except in some unusual circumstances or by an effort of voluntary abstraction, he never conceives himself otherwise than as a member of a body;
社会という状態は人間にとって自然であるとともに必要でもあり習慣的なものでもあるので、何らかの例外的な状況におかれたり自発的に抽象化してみたりすることによらないかぎり、人はこの集団の一員でないということを想像することはけっしてないだろう。(川名山本訳)
現在、図書館なども含めて、比較的入手しやすい関口訳(岩波文庫版)、伊原訳(中央公論社版)、水田永井訳(河出書房新社版)も同様にabstractionを「抽象」と訳しています。
しかし、この場合のabstractionは「抽象」ではなく「脱俗」です。脱俗とは「世俗を抜け出ること」という意味で、つまり隠遁生活のことです。「自発的に隠遁しようとするのでもないかぎり、人は自分を集団の一員として以外は決して考えることはないだろう」とミルは言っているのです。
「脱俗」という訳語はすべての英和辞典に載っているわけではありませんが、載っている辞典もあります。
また、既訳12点の中には、「脱俗」ないし、それに類する訳語を当てているものもあります。しかしそれにもかかわらず、読者が最も手に取りやすいであろう、近作の4点では「抽象」と訳されてしまっているのです。
奥田訳は既訳のいいとこ取りなだけ?──否!
そうすると、奥田訳は、過去の翻訳から最適訳を抜き取った、いわば「いいとこ取り」のベスト盤にすぎないのでしょうか? もちろん違います。
奥田訳では、既訳のどれとも異なる、新しい解釈を行っている箇所もあります。それどころか、英語のネイティブ話者による解説に対して、異なる解釈を提示している箇所すらあるのです。
訳者も困り果てる難物?
過去の翻訳者を含め、幾人かがミルの文章の難解さを指摘しています。
一体英国の批評家はみな、ミルは極めて明快な文体を使駆しているといっているが、われわれ日本人にとっては必ずしもそうはいえない。
──和田聖嗣(ミル『功利主義』「序」より)
父親の早教育の結果かもしれないが、ミルの文章はけっして名文ではなく、論理も明快ではない(『論理学』の著者であるのに)。息のながい文章のなかに、いろいろな挿入があって、全体の意味がつかみにくいばあいがある。
──水田洋(ミル『代議制統治論』の解説より)
諸君の中で、英語の勉学と思想の研究との両方を兼ねて行いたい、という希望をお持ちの方はいないだろうか。こういった希望をもった学徒に、私はミルを英文で読まれることをおすすめする。ただし、ミルの英語は流暢ではあるが、息の長い文章が多く、諸君には、若干むずかしすぎるかも知れない。
──菊川忠夫『J・S・ミル』(清水書院)
他方で次のような意見もあります。
『正義の理論』を一読すれば、どうやらロールズには、ミルに見られる英国流の流麗な文体を期待するのは無理なようであるし、残念なことであるが、彼にはミルのごとき文才が決定的に欠けているようだ。(…)取っ付きやすい直観と経験を頼りに問題の核心に迫ろうとするミルの方法とは、根本的に異なっている。
──渡辺幹夫『ロールズ正義論の行方』(春秋社)
ミルの文章にはたしかに、パラグラフが長く、センテンスが長く、挿入句や挿入節が多いという特徴があるが、文章そのものは、19世紀半ばのものとしてはとくに難しくない。たとえば、同時代のイギリスの批評家、カー ライルの『衣装哲学』と比較してみればいい。ミルの文章は平易さと明解さが際立っていると思えるはずだ。
──山岡洋一『自由論』の翻訳の変遷
訳文が正確であるかは、ミルの論理を正確に追えているかにかかっています。『功利主義論』を読む中で、それまでの文脈を無視して、突然頓珍漢なことをいい出したとすれば、それは原文の問題ではなく、翻訳の問題と考えていいでしょう。
素人訳はやっぱり不安という人へ
そうは言っても従来訳を覆すような、斬新すぎる訳は不安だという方もおられるかもしれません。しかし安心してください。奥田伸一訳は、旧訳(特により新しい関口訳と川名山本訳)と訳出が大きく異なるところをピックアップして解説しているのです。
ですから、もし仮に奥田訳に誤りがあったとしても、他の翻訳ではどう訳されているかわかりますし、それ以外の部分は、旧訳と同じなのです。
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